質疑応答 2024-0290〔電力会社側での地絡事故による需要家側のDGRの不要動作〕の系統図で、PASと主電気室の間に VCBキュービクルがあります。 このキュービクルはなぜ必要なのでしょうか?
ご質問について、下図(質疑応答 2024-0290 の系統図)を基に、この系統図にある VCBキュービクルの必要性について〔① 電力会社との契約電力 ② 短絡保護 ③ 地絡保護〕の観点から検討してみます。 電力会社との契約電力
この需要家の場合、電力会社との契約上〔① 200A以上流れた場合に負荷電流を遮断すること、 ② 電力計量用の VCT を設置すること〕という要求から VCBキュービクルを設置したそうです。〔① については、主電気室の受電部に VCB があるので、この盤の OCR の設定値を換えるか、OCR を交換する、あるいは CT を交換するなどして200Aでトリップするように設定できないか、② については、電力計量用 VCT を VCB や DGR (67G) を組み込んだ VCBキュービクルでなく、電力計量用の VCT だけを組み込んだキュービクルとする〕などの方法も考えられると思います。
短絡保護
電力会社との責任分界点に PAS(方向性SOG付)があるので、PAS の下流(PAS~主電気室間)で短絡事故が起こった場合〔① SO(Storage Over current)動作により、PAS 内部の変流器(CT)がこれを検知し、PAS の開閉器が動作しないよう自動的にロックロックする、② 電力会社側の遮断器が作動して短絡電流を一時遮断する、③ PAS が系統の停電を検知し、自動的に PAS の開閉器を開放する、④ その後、電力会社側の遮断器が自動的に再閉路する〕 というステップで、事故系統を安全に切り離すことが出来ます。
地絡保護
電力会社との責任分界点に PAS(方向性SOG付)があるので、PAS の下流(PAS~主電気室間)で地絡事故が生じた場合、G(Ground)動作により地絡事故を検知して、PAS の開閉器が開放し、下流への電力供給を停止します。 この動作は、電力会社側の地絡継電器よりも早く動作するように設定することにより、事故系統を配電網から切り離すことができます。
以上のことから、PAS~主電気室間に VCB や DGR (67G) は無くても良いと言えます。〔電力計量用の VCT だけを組み込んだキュービクルとする〕などの方法も考えられると思います。 いずれにしても、電力会社と良く相談して決めることが必要です。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)