これまでに、「系統解析業務に係って40年、いま振り返ると …」について、(第1章)系統解析を始めた頃、(第2章)雷サージ計算、(第3章)変圧器励磁突入電流計算、(第4章)タービン発電機モデル絡めた計算 について説明して頂きました。引き続き、(第5章)系統解析は奥が深すぎて について説明して下さい。
長年、実務で系統解析を行って来て、実測データやシミュレーション結果など、様々な電気的な過渡現象の波形を見てきました。そこで思うのは、系統解析において実測とシミュレーションの波形比較を行うと完全にマッチングしたことがほとんどないのです。必ず、ズレというか誤差がでます。
経験上、一番目の理由は、系統解析を行う人の専門的なスキルで全然変わってくるからです。一般的な系統解析ソフトを扱うと、ライブラリーに組み込まれているコアとなるモデルはブラックボックスとなっているが多い。このため、ブラックボックス内の計算式がどのよう扱われているかわからない以上、シミュレーション結果の判定が解析ソフトを扱う人の専門的スキルに影響されてくることである。
二番目の理由は、電力系統に関連した電気的過渡現象の実測波形は非線形性であり、線形性はまれであることを認識するべきである。このため、系統解析ソフトなどは非線形を線形近似として式を展開してコアのモデルを用いる場合が多い、これによりモデルの誤差が出てくると思われる。
三番目の理由は、アナログとデジタルの違いによることである。電力系統の電気機器は、物理的に連続運転をしていることから、アナログの世界を実現している。解析ソフトを用いる場合は、数値解析する上で刻み時間Δtが存在し、ここで必ず連続性が失われる。デジタルの世界では、数値解析を行えば必ず計算誤差が生じてくる。
系統解析を長年行ってきて、サージ現象から潮流計算まで、電気的な現象時間が全然違うのに、たくさんの電力系統関連するモデル構築してきた。今も、ミクロからマクロまで (μsecondからhourまで)、よく計算間違いを引き起こさないのが不思議である。
最後に、実系統並びに実プラントでの電気的な実測波形(電圧、電流、周波数、電力、etc.)をたくさん分析し、たくさん見ることにより(特に事故波形、異常現象の波形)、解析ソフトでのモデリング構築する際に大いに役立った。まだまだ、書きたいことはありますが今回はこの程度で、終えておきます。
(壹岐 浩幸 記)