質疑応答 2024-0298〔雷等電位ボンディングとSPDの適用〕で、建物に引き込まれる電力線や通信線、配管(給水管やガス管)がある場合の対応策について説明して頂きました。 そこで、それぞれ等電位化されている建物Aと建物Bがあった場合、どのような対策をとれば良いでしょうか?
建物内の接地を統合接地して等電位化することにより、落雷時にA種~D種の各接地間に生じる電位差を解消できます。 また、建物間に電力線や通信線が敷設されている場合、建物への電力線や通信線の引込口に SPD を設置して、SPD によって雷サージをバイパスさせ、これらが接続されている機器の絶縁破壊を防ぐことが出来ます。 建物に引き込まれる給水管やガス管などは、引き込み口の出来るだけ近くで、統合接地されたボンディング用バーにボンディング用金具および導体を用いて接続(ボンディング)するなどして等電位化することが必要です。
等電位化されている建物間の保護
建物Aと建物B間に電力線や通信線が敷設されていて、これらが引き込まれる建物Aおよび建物Bへの引込口に〔SPDを設置していない場合〕と〔SPDを設置している場合〕の現象について比較すると下記のようになります。
〔SPD を設置していない場合〕: 建物Aと建物B間に電位差が生じて、建物AおよびBの機器を絶縁破壊する恐れがあります。 ① 例えば、建物Aの受雷部に落雷 => ② 雷電流が建物Aの接地極へ流れる => ③ 建物A の電位が上昇する => ④ 建物Aの機器が絶縁破壊する => ⑤ 建物Aの電位上昇によって発生した建物Bとの電位差により、雷サージが建物Aから建物Bに流れ、建物Bの機器も絶縁破壊する。
〔SPD を設置している場合〕: SPD が雷サージをバイパスして大地に流すので、機器の絶縁破壊が起こりません。① 例えば、建物Aの避雷針に落雷 => ② 雷電流が建物Aの接地極へ流れる => ③ 建物A の電位が上昇 => ④ 建物A の SPD で雷サージを接地極から電力線や通信線にバイパス => ⑤ 建物Aの電位上昇によって発生した建物Bとの電位差により、雷サージが建物Aから建物Bに流れるが、建物Bでも SPD で雷サージを電力線や通信線から接地極にバイパスするので、建物AおよびBの機器の絶縁破壊は起らない。
SPD 設置の必要性
このように、建物に出入りする全ての電力線と通信線に SPD を設置すると SPD の数が膨大になります。 そこで、実際の計画にあたっては、① 電子機器などの壊れやすい機器の回線、 ② 故障した場合に工場の運転停止に至るような重要な回線、などに優先的に接地するなど実務的に正しく検討して設置することが必要です。 これらの検討にあたっては、専門メーカーとよく相談して計画することをお勧めします。
参考: 質疑応答2024-0295〔等電位ボンディングと雷等電位ボンディング〕に記載の Web Site に〔建物間の雷等電位ボンディング〕について〔図解〕入りで、分かり易い説明がありますのでご参考にして下さい。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)