統合接地されている建物に出入りする電力線や通信線、配管(給水管やガス管)などについて、等電位ボンディングの施工例および SPD の適用について説明して下さい。
建物内の接地を統合接地して等電位化することにより、落雷時にA種~D種などの各接地間に生じる電位差を解消することができます。 ただ、雷は当該建物に取り付けられた外部 LPS (Lightning Protection System: 雷保護システム)からだけでなく、例えば電力線、通信線、配管(給水管やガス管)、テレビアンテナ、ケーブルテレビ、電話など、建物に引き込まれている電線などすべてが雷電流の侵入経路となる可能性があります。 したがって、そのような外部からの雷の侵入に対し、電線類にはSPDを設置し、電気機器の接地だけではなく建物全体の導電体に対して等電位化を図ることが必要です。
雷等電位ボンディングの概念
上記のように、建物に引き込まれる電力線や通信線、配管などがある場合、① 給水管やガス管などの配管は、引き込み口の出来るだけ近くで、統合接地されたボンディング用バーにボンディング用金具および導体を用いて接続する(ボンディングする)、② 電力線や通信線など常時電気が流れている回路は、直接導体を接続することが出来ないため、SPD(Surge Protection Device:サージ防護デバイス)を用いて統合接地されたボンディング用バーに接続する、などの方法で建物全体として等電位化を図ります。
参考: JLPA(日本雷保護システム工業会)の「雷害対策設計ガイド」 に、内部雷保護システム概念図、引き込み口付近での雷等電位ボンディング施工例などの図がありますので、ご参考にして下さい。
SPD (Surge Protection Device) の適用
SPD は、雷などで生じる瞬間的な高電圧や大電流(サージ)から電気回路を保護する装置です。 SPD は、電力線や通信線に発生するサージの侵入を防ぐために、サージの発生源と保護したい機器の中間に設置します。 SPD は、常時は絶縁状態であり回路を流れる電気に何の作用も及ぼしませんが、ある電圧を超えると内部が短絡して流入したサージ電流をそのまま出口側の配線へ放出します。 これにより、サージがコンピュータなどの機器内部の回路にそのまま流れ込んで ① 誤作動や故障の原因となる ② 物理的に破損して使用不能になる ③ 火災の原因となる、ことなどを防ぎます。
SPD の概要と選定については、質疑応答 2021-0154〔SPD・避雷器の選定方法〕をご参照下さい。 SPD は、回路や回線の種類や特性、保護対象の機器、サージの想定規模などに応じて様々な種類がありますので、具体的には、専門メーカーの Web Site で確認するか、直接専門メーカーに問い合わせることをお勧めします。
雷保護システム (Lightning Protection System : LPS)
雷保護システムは、落雷による建物や構造物の被害を最小限に抑えるためのシステムで、外部雷保護システム(外部 LPS)と内部雷保護システム(内部 LPS)から構成されています。 建物内の電気・電子機器・設備類を雷サージから保護するためにも適切な雷保護対策が重要です。
1. 外部雷保護システム
外部雷保護システム(外部 LPS)は、雷を補足して大地へと安全に流すシステムで、① 受雷部システム(突針、水平導体、メッシュ導体): 雷を補足する部分、② 引下げ導線システム: 雷電流を大地へと導くための導線、③ 接地極システム: 雷電流を大地へと放流する接地極、の要素から成り立っています。
2. 内部雷保護システム
内部雷保護システムは(内部 LPS)は、等電位化によって危険な電位差(火花放電)の発生を抑えること、あるいは発生した電位差でも火花放電が起きないように安全離隔距離を確保する(距離を離す)、または絶縁して安全を確保する保護システムです。
参考: 質疑応答2024-0295〔等電位ボンディングと雷等電位ボンディング〕に記載の Web Site に 〔雷等電位ボンディングとSPD〕について〔図解〕入りで、分かり易い説明がありますのでご参考にして下さい。
(電気エンジニアのためのQ&Aコミュニティ事務局 亀田和之)