連続運転が必須な石油・化学プラントのような産業用電気設備において、安全性および信頼性を維持するために必要な「① 点検・検査の区分 ② 点検頻度および点検方法 ③ 電気機器ごとの点検・検査項目」などについて説明した資料がありましたら紹介して下さい。
「産業用電気設備の保守点検」について参考になる1つの資料として、公益社団法人石油学会が発行している石油学会規格 「JPI-8S-4-2018 電気設備維持規格」があります。
この規格は石油精製事業所における電気設備を安全に維持するためのガイドラインとして作成されたものであり、電気事業法に基づき制定される保安規程の定めや、電気設備の技術基準の定めを逸脱することなく実施される事を前提として作成されています。 規格の内容は設備の劣化現象とその検査、評価、補修に関る考え方や設備異常の事例紹介の他、推奨される最新技術などを盛り込んだ規格として整理されています。
この規格は、石油精製事業所だけでなく、あらゆる業界の「電気設備の保守点検」についてのガイドラインとしても極めて貴重な資料です。この規格は、下記の Web Site から購入することができます。ご参考にして下さい。
公益社団法人石油学会|規格/刊行物|石油・石油化学工業用装置関係JPI規格一覧 (sekiyu-gakkai.or.jp)
補足:
石油学会規格の体系は、「基盤規格」としての設備維持規格(JPI-8S-1 配管備維持規格、JPI-8S-2 備維持規格、JPI-8S-3 回転機維持規格、JPI-8S-4 電気設備持規格、JPI-8S-5 計装設備機維持規格、JPI-8S-6 屋外貯蔵タンク設備持規格)と、これらの規格を補完する「共通技術基準」から構成され、関連する JPI 規格、国内の関連規格および基準、国際関連規格および基準との関連性も考慮したものとなっています。
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ご参考に「JPI-8S-4-2018 電気設備維持規格」の目次を紹介します。詳細は、下記のURL をクリックしてご参照下さい。
https://www.sekiyu-gakkai.or.jp/jp/kankou/kikaku/8m.html#JPI-8S-4-2018
第1章 共通編
1. 設備の維持管理
① 一般 ② 点検の計画 ③ 点検の区分(日常点検、定期点検、臨時点検)④ 点検の方法(巡視点検、普通点検、精密点検、運転中のモニタリング)⑤ 点検準備及び安全(点検対象設備の確認とチェックリストなどの作成、検査機器の準備及び管理、停電復電工程の調整、点検作業の安全)
2. 電気設備の劣化
① 一般 ② 劣化要因(電気的要因、熱的要因、機械的要因、化学的要因、環境的要因、その他要因)③ 電気的劣化 ④ 機械的劣化
3. 補修手順
① 一般事項 ② 補修(応急補修、交換補修)③ その他
4. 長期連続運転のための改善
① 一般事項 ② 設備の改善(設置環境の改善、材質・構造の改善、モニタリングや運転中検査による改善)
5. 検査機器及びデータ管理
① 一般事項 ② 検査機器の管理・校正 ③ データの管理・運用 ④ 保護協調整定値管理
6. 変更管理
第2章 油入変圧器編
1. 適用範囲
2. 変圧器の劣化・寿命
① 機器の構成 ② 変圧器本体の劣化(熱的要因及び劣化、電気的要因及び劣化、機械的要因及び劣化、環境的要因及び劣化) ③ 変圧器付属設備の劣化の要因 ④ 絶縁油の劣化 ⑤ 絶縁物の劣化 ➅ 変圧器の寿命
3. 変圧器劣化診断
① 外部点検(外観検査) ② 内部点検(絶縁油の検査、絶縁紙の検査、タップ切換器の検査)
4. データ評価と点検周期
① 外部点検データの評価 ② 絶縁油一般特性分析 ③ 油中ガス分析データの評価(ガス分析値による判定)④ 絶縁紙の平均重合度測定と評価(平均重合度による絶縁紙の評価)⑤点検周期
5. 補修
① 変圧器本体(変圧器本体、無電圧タップ切換器、絶縁油、窒素補充、吸湿呼吸器関連)② 付属品 (負荷時タップ切換装置、ブッシング、冷却装置)③ 塗装
6. 更新判断
7. 変更管理
第3章 ケーブル編
1. 適用範囲
2. ケーブルの劣化
① 機器の構成 ② CVケーブルの劣化 ③ OFケーブルの劣化
3. ケーブルの劣化診断
① 目視検査(CVケーブルの目視検査、OFケーブルの目視検査)② 絶縁性能検査(CVケーブルの絶縁性能検査、OFケーブルの絶縁性能検査)
4. データの評価と点検周期
① 高圧CVケーブルのデータの評価(目視検査データの評価、絶縁検査データの評価、シース絶縁抵抗及び遮へい層電気抵抗データの評価)② OFケーブルのデータの評価(目視検査データの評価、油中ガス分析データの評価、絶縁油分析データの評価、防食層絶縁抵抗データの評価)③ 遮へい層の接地 ④ 点検周期
5. 補修と更新
① 補修(CVケーブルの補修、OFケーブルの補修)② 更新(特別高圧CVケーブルの更新、高圧CVケーブルの更新、OFケーブルの更新)
6. 変更管理
第4章 受配電盤編
1. 適用範囲
2. 受配電盤の劣化・寿命
① 一般 ② 劣化要因(熱的劣化、電気的劣化、機械的劣化、環境的劣化) ③ 構成機器の劣化(遮断器、限流ヒューズ、断路器、主回路母線・支持物、計器用変成器、進相用コンデンサ、配線用遮断器・低圧電磁開閉器、保護継電器、制御配線、接地設備)④ 寿命
3. 盤の劣化診断
① 劣化診断技術(遮断器、限流ヒューズ、断路器、計器用変成器、進相用コンデンサ、配線用遮断器・低圧電磁開閉器、保護継電器、制御配線)② 課電中点検 (外観点検、測定器診断)③ 停電中点検 (簡易点検、普通点検、精密点検)④ 性能検査 (絶縁抵抗測定、遮断器特性、限流ヒューズ特性、断路器特性、計器用変成器特性、進相コンデンサ特性、配線用遮断器・低圧電磁開閉器特性、保護継電器特性、制御配線、操作スイッチ・補助リレー)⑤ 機能検査 (作動検査、連動検査)
4. データ評価と点検周期
① 外観点検データの評価 ② 測定器診断データの評価(赤外線サーモグラフィ、部分放電診断)③ 性能検査データの評価(絶縁抵抗測定データの評価、遮断器・接触器検査判定値、限流ヒューズの抵抗値、断路器の抵抗値、計器用変成器データの評価、進相コンデンサデータの評価、配線用遮断器・低圧電磁開閉器、保護継電器試験データの評価、制御配線、操作スイッチ・補助リレー、接地設備)④ 機能検査データの評価(作動検査、連動検査)⑤ 点検周期]
5. 補修
① 整備(操作機構部、グリップ接触部、その他)② 塗装 ③ 交換補修(限流ヒューズ、計器用変成器、配線用遮断器、保護継電器、補助リレー)④ 延命化
6. 変更管理
第5章 電動機編
1. 適用範囲
2. 電動機の劣化・寿命
① 機器の構成(かご形誘導電動機、同期電動機)② 電動機本体の劣化(熱的劣化、電気的劣化、機械的劣化、環境的劣化) ③ 固定子巻線の主な劣化 ④ 回転子の劣化 ⑤ 軸受の劣化(ころがり軸受の劣化、すべり軸受の劣化)➅ 励磁装置の劣化 ⑦ 冷却器の劣化 ⑧ 絶縁材料の寿命(温度と寿命、使用環境と絶縁寿命)⑨ 電動機の寿命
3. 電動機の劣化診断
① 外観点検(外部点検、内部点検、軸受の点検)② 励磁装置の点検 ③ 端子箱の点検 ④ 絶縁性能試験(簡易絶縁性能試験、精密絶縁性能試験)⑤ 回転子診断
4. データの評価と点検周期
① 外観点検データの評価(外部点検データの評価、内部点検データの評価、軸受点検データの評価)②励磁装置の点検データの評価 ③ 端子箱の点検データの評価 ④ 絶縁特性試験データの評価(簡易絶縁特性試験データの評価、精密絶縁性能試験データの評価)⑤ 点検時期及び周期(外部点検、内部点検、軸受点検、絶縁診断、グリース・潤滑油補給、点検周期)➅ 高圧電動機の寿命推定
5. 補修
① 電動機本体(固定子、回転子、軸受、励磁装置、冷却器、端子箱)② 更新判断
6. 変更管理
第6章 制御電源・蓄電池編
1. 適用範囲
2. 電源装置の劣化・寿命
① 電源装置の構成例 ② 整流装置・インバータの劣化(主回路部、制御部)③ 蓄電池の劣化(鉛蓄電池、アルカリ蓄電池)④ 変圧器の劣化 ⑤ 寿命(整流装置・インバータの寿命の考え方、蓄電池の寿命の考え方)
3. 電源装置の劣化診断
① 整流装置・インバータの劣化診断(簡易点検、普通点検、精密点検)② 蓄電池の劣化診断(簡易点検、普通点検、精密点検、蓄電池の容量試験)③ 乾式変圧器の劣化診断
4. 劣化診断データの評価と点検周期
① 整流装置・インバータデータの評価と措置 ② 蓄電池データの評価と措置(鉛蓄電池、アルカリ蓄電池)③ 乾式変圧器データの評価と措置 ④ 温度管理(整流装置・インバータデータ及び乾式変圧器、蓄電池)⑤ 点検周期
5. 補修
① 整流装置・インバータ ② 蓄電池(蓄電池本体、パッキン・液面検出センサー、触媒栓)③ 環境整備
6. 変更管理
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付属書および参考資料
付属書A 電気設備の重要度分類
付属書B 劣化点(不良箇所)の標定手法
参考A 変圧器の余寿命診断技術
参考B 微地絡電流測定による劣化診断
参考C 活線下の絶縁劣化診断法
参考D 特別高圧CVケ-ブル水トリ-劣化診断技術
参考E 計器用変成器・モールド材の比較
参考F 盤内各部の最高許容温度と温度上昇限度
参考G 部分放電診断技術
参考H 真空遮断器・真空度評価の要点
参考J 電気機械形(誘導円板形)過電流継電器及び電圧継電器の動作時間誤差
参考K 保護継電器の動作原理別分類
参考L ころがり軸受の診断装置
参考M 静電容量 (Cアップ率) による劣化進展度診断法
参考N 電動機の余寿命診断技術
参考P 蓄電池の運転中劣化度評価技術の開発
参考Q 短時間放電法による蓄電池の寿命診断
参考R ころがり軸受異常のモニタリング手法
(制定:2004、2版:2005、3版:2006、4版:2009、5版:2010、6版:2015、7版:2018)
(産業用電気設備関係の方からの回答です)